日本の芸。知って、触れて、好きになる。

浪曲とは?

そもそも浪曲とは?

 

日本の話芸のひとつ、「浪曲」
 
落語とか講談とかは聞いたことがあるけれど、浪曲は聞いたことがないなあ・・・
となる人は、結構多いのかもしれません。
 
浪曲は、明治時代に「浪花節」(なにわぶし)という名前ではじまった芸能です。
語り芸のなかでも新しく、周りの芸能のいいところを貪欲に吸収して生まれた華やかな芸は、庶民層、地方の炭坑夫、世間的にあまり地位の高くなかった人々に熱烈に迎えられ、全盛期は日本を覆うほどの勢いで「大衆芸能の王」と呼ばれていました。
 
しかし、全盛期のおもかげむなしく、テレビなどの普及で急激にしぼんでいった浪曲界。
まさに、波乱万丈といえるでしょう。
 

生命力の芸

そんな浪曲界ですが、ここ数年、若手の浪曲師が頭角をあらわし、怒涛の勢いで盛り上がりをみせています。
寄席や全国での会の開催、創作浪曲や浪曲界に留まらないメディアへの露出で注目があつまっています。
また浪曲師、曲師の入門者も増えており、これから先の浪曲界を担っていく若手に期待が集まります。
ふたたび気を吐かんとする姿を応援していきたい、大注目な芸能です。
 
 
浪曲って一体どんな芸ですか?

 

華やかな浪曲のスタイル
 
浪曲とは、落語、講談と並び称される話芸の一つですが、
2つと大きく違っているのは、唸る「浪曲師」と三味線を弾く「曲師」の2人でやる芸だということ。
浪曲師は、啖呵(セリフ)と節(うた)で、時に登場人物を演じ、時に語り手となって物語を聞かせます。
曲師はその浪曲師に合わせて三味線を弾きます。
人物のリアクションを三味線で表現したり、時にはBGMのような役割をしたり、浪曲師が独特のメロディーで唸る節のときには、その節に合った「手」を弾きます。
 
 

いわば「和製ミュージカル」!

しかも、2人の間に譜面はなく、節も手も、すべて即興で行います。(スタイルとして、何百回も稽古をし、びたっと2人あったものをかける浪曲師もいます)
しばしば落語をジャズにたとえたりしますが、セッションというところでは、浪曲も非常に近いところがあると思います。
 
そのため、浪曲はまた他の芸能と違い、「百人浪曲師がいれば、百人とも節が違う」といわれています。
つまり、屋号や師匠の芸は受け継ぎつつも、「自分自身の節」を確立していく芸といえるでしょう。
『浪曲では一声、二節、三啖呵といわれ、味のある声に絶妙なタイミングで繰り出されるアテ節。情景、喜怒哀楽を表現する啖呵。これらが三位一体となっていい浪曲ができるといわれています。』(日本浪曲教会HPより)

 

まるで王様、独特の上演スタイル
 
浪曲は、演芸の中でも特に、舞台装置が華やかです。
ここも、座布団1枚の落語、釈台ありの講談とは、大きく違うところです。
 
 
基本的に、浪曲師は立って公演をします。
腰の高さほどあるテーブルを演台にし、そこに「テーブルかけ」というきらびやかな布をかけています。
その隣には、湯呑みを置くようのサブのテーブルがあり、そこには演者の名前がはいった「湯呑みかけ」をかけます。
また、背後には背もたれの長い椅子をおき、それぞれの流派の家紋がはいった「椅子かけ」をかけます。
 
このセットにプラスして、大きなホールなどでやる場合は、左右に低めの台を置き、そこに飾り用の「袖かけ」という布をかけ、さらに松の盆栽などを載せます。
さらに、椅子かけのうしろに、金屏風を置く場合もあります。
 
このビジュアルの華やかさも、浪曲の魅力と言えるでしょう。
 
 

芸の王座にいた様子が残っています。

 
上手に座る曲師の前には、衝立(ついたて)を置き、観客から見えないようになっています。隠されたところから、艶やかな三味線の音色や掛け声が聞こえてくるのが、想像力を膨らませて、一層引き込まれます。
 
近年では、衝立を置かずに、「出弾き」と呼ぶ客前に出て弾くスタイルも増えてきています。
 
 
5点セットになっているテーブルかけは特製で、それぞれの演者を表現した美しい装飾になっており、相撲の化粧回しのように、お客さんが贔屓の浪曲師に送ります。
人気のある浪曲師は、たくさんのバリエーションを持っており、時期や場所にあわせて、テーブルかけを使いわけます。
 
寄席などに出演する時は、講談師がつかう釈台に、小さいテーブルかけをかけて、浪曲師、曲師共に座布団に座って公演したりなど、様々なスタイルをみることができるでしょう。
 
 
ざっくり!浪曲の歴史

 

「大衆芸能の王」芸能の最先端を走っていた浪曲
 
浪曲は、語り芸のなかでも比較的に新しい芸能です。
それまで、道端で通行人に対して行う大道芸であった「ちょぼくれ」、「ちょんがれ」、「阿呆陀羅教」などの芸があつまり、明治時代になって「浪花節」(なにわぶし)として誕生しました。
 
武家や僧侶の間ではじまった講談、都会の庶民に愛された落語とは違い、浪花節は道端でおこなう大道芸からであったため、地位が低く、はじめは寄席に上がることが許されていませんでした。
 
しかし、それゆえにたくましく、諸芸のいいところをしたたかに取り入れて進化し、明治時代に「浪花節」として鑑札を取得しました。
桃中軒雲右衛門により、現在につづく、華やかな舞台装置の上演のスタイルが確立します。そこから、明治という近代化の時代をきらびやかに飾る芸能として一斉を風靡することになるのです。
全盛期は全国に三千人もの実演者がおり、「長者番付」いわゆる高額納税者リストでは、上位のほとんどが浪曲師だったといわれています。
 
 

落語ブームといわれる現在でも、落語家さんは全国に900人弱。どれくらい人気だったのかがうかがえます。

 

そのすさまじいまでの勢いも昔。急速な衰退を経験し、現在、浪曲師は80人弱となっています。

 

浪曲のホームグラウンド、浅草「木馬亭」
木馬亭とは?
 
実は、浪曲には、浪曲専用の定席というものがあります。(※定席:常設の寄席のこと)
 
浅草寺さんの近くにある、日本で唯一の浪曲の定席「木馬亭」
木馬館という、雰囲気のある木造建物の1階で、毎月1日〜7日まで、浪曲の定席公演が行われております。※現在、感染症対策により、5日間に変更。
 
この木馬亭の存在こそ、浪曲を今日まで守ってきたといっても過言ではないでしょう。
 
 
演目では、浪曲の合間に、一席だけ講談が入るのが特色となっています。
また、落語の寄席ではトリ以外の持ち時間が15分なのと違い、1席30分とたっぷき楽しめるのが魅力的。25歳以下は半額で楽しめるという割引制度もあります。
 
 
 

浪曲に少しでも興味をもたれた方は、こちらの木馬亭に足を運んでみてください!

 
そこで、ベテラン師匠方のパワーに圧倒されるもよし、新人の芸人さんの成長を見守るもよし。
贔屓の芸人さんを見つけることができれば、そこから独演会などにいって、さらに楽しみのはばがひろがります。
 
都内だったら、ほぼ毎日、どこかで会がひらかれています!
地方でも、オンラインで配信している場合などもあるので、ぜひチェックしてみてください。
 
 

定席以外でも会をやっているので、まずは小さな会に遊びに行ってみるのがおすすめ!